はじめに
標記の件について、ネット上の資料・記事や、ニコ生配信上の経験を元に考えてみた。
ネットで調べて出てくる情報は、主にネットの掲示板やSNSを念頭に置いたものが多いが、配信にも当てはめられる部分はそれに沿って考えていきたい。
類似記事
不機嫌、社会的伝染と正常化
早速引用となるが、
スタンフォード大学のジャスティン・チェンたちは、ネット上で荒らしをしている人たちは普通の人なのか、それとも反社会的的な人なのかを突き止めようとした。
実験では、667人の被験者たちにオンラインで論理的なクイズ、数学クイズ、文章問題、などの5分間クイズを解いてもらった。
(中略)
ちなみに、このクイズの目的は被験者たちの機嫌を良くする、あるいは悪くすることだった。
(中略)
それから、そのままの感情の被験者たちに、匿名でオンライン討論会に参加してもらった。
討論のテーマは2016年アメリカ大統領選で、被験者たちは女性がヒラリー・クリントンに投票すべき理由を説明する記事を読まされた。
(中略)
その結果、オンラインディスカッションをシミュレートする実験を通じて、機嫌の悪い被験者は機嫌のいい被験者よりも場を荒らすコメントをし、他の人が場を荒らす投稿にさらされるとそれが顕著になっていた。
機嫌の悪い状態で否定的な文章を読まされた被験者の投稿のうち、68%が場を荒らし、機嫌のいい状態で普通のコメントを見た被験者(35%)に比べ、荒らす確率が2倍になることがわかった。
この理由は2つあるみたいです。
1つ目は社会的伝染と呼ばれるもので、人間は周囲と同じ行動をとりやすくなるのです。
2つ目は正常化と呼ばれる概念で、大勢の人たちがしたがっていれば悪い結果にはならないと思ってしまう心理現象です。
(中略)
つまり、性格ではなく状況だということです。
(中略)
参考文献
ネット上で場を荒らす人ってどんな人なのかを調べた研究! – Yoske
Anyone Can Become a Troll: Causes of Trolling Behavior in Online Discussions
上記の記事によれば、荒らしが荒らしたる要因は“性格”ではなく、本人たちを取り巻く”環境”や”状況”、単に“不機嫌”が原因ということになる。
まず、いわゆる「むしゃくしゃしてやった」というやつであろう。そして社会的伝染、正常化的な反応からの「“世界的ですもんね 乗るしかない、このビッグウェーブに”」というやつかもしれない。古い言葉で言うと“祭り”という風に捉えればいいだろうか。
正直な話、単発の荒らしであれば上記の記事に概ね同意できる。機嫌が悪いときには憂さ晴らしをしたくなる。しかし、荒らしを継続反復して続ける方々に当てはめるとするとどう解釈すれば良いだろうか。
日常的な不機嫌
では推察すると、荒らしを反復継続される方というのは、上記の記事から導くとすれば、”日常的な不機嫌状態”に陥っているのでは?と推察することが出来る。要因は“性格”ではないという基本路線があるからだ。
”日常的な不機嫌状態”に陥っているとすれば、荒らし行為が反復継続的になるというのもうなずける。常に存在する不機嫌な感情は、どこかで処理しなくてはならない。そうでないと自分が潰れてしまう。
かといって、不機嫌の発散は、なにも荒らし行為のみでしかなされないものではないから、同情の余地はない。
性格という意見
また早速引用であるが、
「インターネット・トロール(荒らし)」とは、掲示板やコメント欄、チャットなど複数人でのコミュニケーションが可能な場所で、会話を中断させたり人を不快にさせるようなコメントを残すユーザーのことを指します。そんな「荒らし」は、ナルシシストかつサイコパスかつサディスティックな性格の持ち主であることが研究により明らかになりました。
Trolls just want to have fun – trolls-just-want-to-have-fun.pdf
(PDF)http://scottbarrykaufman.com/wp-content/uploads/2014/02/trolls-just-want-to-have-fun.pdfInternet Trolls Are Narcissists, Psychopaths, and Sadists | Psychology Today
http://www.psychologytoday.com/blog/your-online-secrets/201409/internet-trolls-are-narcissists-psychopaths-and-sadists(中略)
「こういった荒らし行為を行う人には何か特徴があるのか?」ということで、マニトバ大学のErin E. Buckels氏、ウィニペグ大学のPaul D. Trapnell氏、ブリティッシュコロンビア大学のDelroy L. Paulhus氏の3人が調査を行っています。調査では、1200人以上の被験者を対象にして、「性格調査」と「インターネット上でコメントを残す際の行動調査」を行いました。
これらのデータを基に、「荒らし」を好む人の性格特性と「ダークテトラッド」の関連性を調べた結果が以下のグラフ。ダークテトラッドとは、性格特性の中でも重複する部分の多いナルシシズム(自己愛、自己陶酔)・マキャヴェリズム(目的のためには手段を選ばない、という考え方)・サイコパシー(精神病質、精神病質者のことをサイコパスと呼ぶ)の3つに、サディズム(加虐性欲)を加えた性格特性のまとまりです。
注 凡例(左上):マキャベリズム、ナルシズム、サイコパシー、サディズム(2種)
注 凡例左軸:平均的パーソナリティ(標準化、標準偏差?)
注 凡例横軸:彼らが好むネット上の遊び方
ネット上に出没する「荒らし」はナルシシストでサイコパスなサディストであることが研究により判明 – GIGAZINE
見るだけ(Non-Commenter)、議論(Debating Issues)、日常会話(Chatting)、荒らし(Trolling)、その他(Other)
上記グラフは、それぞれの性格の傾向を元に作られたグラフである。一般人のものが記されていないから、左軸がよくわからないから、実際どの程度の塩梅で見たら良いかわからないが、皆一様に荒らし(Trolling)に対する意欲については有意に高く見える。
下記のそれぞれの性格について引用する。
マキャベリズム:どんな手段や非道徳的な行為であっても、結果として国家の利益を増進させるのであれば許されるという考え方[1]
ナルシズム:自己を愛したり、自己を性的な対象とみなす状態を言う[1]。オートセクシャル、メトロセクシャルなどの総称
サイコパシー:精神障害の一種であり、社会に適応することが難しい恒常的なパーソナリティ障害[1]
サディズム:相手(動物も含む)を身体的に虐待を与えたり、精神的に苦痛を与えたりすることによって性的快感を味わう
それぞれ Wikipedia より
上記を見るに、一般的な荒らしのイメージとしてもこれだろうか。混乱や悲劇をいとわないという荒らしのイメージからしても合致いするし、ニコ生でも何度も経験してきた。
実際のところ、ニコ生で配信を始めた当初、配信するたびに荒らされた時期があったが、コメントの書き込み内容からして中学生か高校生が遊びでやっているのだと思っていた。しかし、配信を進めていく中で、いい年をした方々が荒らしという遊び方をしていると知り、戦慄したものがある。
この、”性格”と荒らしが関係するという意見は、前述の“不機嫌”とは相反するが、”特定の性格”の人たちが荒らし行為を好むとなれば、環境とか、状況とかといった要因はないということになるし、“不機嫌”だから、という意見はどう捉えればいいだろうか。
相乗効果の予感
だが、“不機嫌”といった感情要因と“性格”は決して切り離せないものと考える。
”悲観的な性格”の人は、何を見ても悲観的に考えてストレスをためるだろう。
それと同じで、ある”特定の性格”の傾向の方々は、日々の生活上”慢性的な不機嫌”に陥りやすいのではないか、という考え方も出る。それも、発散する方法は他人に向けてという形で。
“不機嫌”という感情要因と“性格”の相乗効果である。
どちらが先なのかわからない。ストレスなどから性格が曲がってしまったのか、元々曲がっているから“不機嫌”を感じやすいのか。
“特定の性格”の方々の傾向としては、一見決してストレスを受けやすいということはないように見える。しかし、自己愛という部分に弱点があるようだ。
自己愛的防御
詳細は「自己愛的防衛」を参照
自己愛的防御[注 2]とは、自己の理想化された側面が温存され、その後に限界が否認されるという一連のプロセスである[4]。意識的・無意識的にかかわらず、罪と恥の感情に駆られる[5]。それは自己イメージが壊される事を恐れてであり、ゆえに彼等に対するあらゆる非難は理不尽なものであると断定する。
ナルシズム – Wikipedia
自己愛的防衛(じこあいてきぼうえい、英: Narcissistic defences)とは、自らの理想的な側面を保護し、その側面の限界を否認するプロセスである[1]。そうした人々は、硬直的で融通が利かない傾向がある[2]。彼らは意識的・無意識的にかかわらず、しばしば罪と恥の感情に駆られる[3]。
自己愛的防衛 – Wikipedia
”彼らは意識的・無意識的にかかわらず、しばしば罪と恥の感情に駆られる”という記述がある。一見傲慢でありながらガラスの心を持ち合わせているとも読める。
人間に二面性があるのは当然だから、傲慢な側面と繊細な側面、あってもいいとは思う。
ネットの掲示板やニコ生などを荒らせば楽しいだろう。書いた人、配信している人は混乱するし、配信を荒らせば配信者のその様子をもリアルタイムで見ることが出来る。他人を征服するといった、自己愛の回復にはもってこいの場といえるかもしれない。
結論
結局のところ、荒らしの要因については、環境や状況、感情の側面と、性格の側面が混じり合って生じるものと考えるべきだろう。性格の面も、環境要因が長く長く関わっているかもしれない。
荒らし自身が自己を荒らしと認識しているかどうかはまちまち。ニコ生でやりとりした中では、荒らしとの自覚のある人が結構いたが、それは良い方で、そもそも100人いて100人が荒らしなら、それが正常だが、実際は違うから。
ネットにネガティブコメントを書く人は単純に「ドSなだけ」だと判明 / 荒らしの割合はネットユーザー全体の5.6%
ネットにネガティブコメントを書く人は単純に「ドSなだけ」だと判明 / 荒らしの割合はネットユーザー全体の5.6% – 東京産業新聞社
5.6%が大多数を不快にさせているという調べには恐怖すら覚えるが、これもまた事実であって、無視できない。しかし、荒らしを駆逐する方法に特効薬がない以上、数字は数字、傾向は傾向として受け入れ、認識を確かにしていくことしかできない(後は開示請求とか)。
そして、“不機嫌”などの感情要因であろうと、“性格”的な要因であろうと、荒らしは控えよう。荒らしても、多分思い通りに行くことは少ないだろうし、それが“不機嫌”を増長させる要因にもなりかねない。
絵を描くとか、文章を書くとか、そういう文化的な方面で発散するのはいかがでしょうか。これは煽りではない。
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